中国では様々な問題が起こっています。
米国との貿易戦争から始まった覇権を争う冷戦、バブル崩壊に伴う経済破たんの可能性、香港での民主化デモの規模の拡大と長期化など、どれも国を揺るがすほどの深刻な問題です。
日本とも東シナ海で対立していますし、フィリピンやベトナムとも南シナ海で領有権を争っています。大きな問題だけでたくさんありますね。
どれだけ揉めてるんだって思いますが、まだまだあります(^_^;)
中国は国内も国外でも様々な問題を抱えていますが、民族問題も大きな問題となっていますよね。2019年にはウイグル人に対する弾圧の証拠文書が流出し、世界が注目しています。
出典:ウイグル人に「情け容赦は無用」、中国政府の内部リークで新事実明らかに 米報道 AFP
今回はそんな民族問題である、ウイグル自治区とその弾圧問題についてご紹介します。
ウイグル自治区とは?場所はどこにあるの?
ウイグル自治区とは場所は中国の北西部にあり、ウイグル族が中心として暮らす地域です。下記地図の黄色い部分↓です。
フウクマ
お隣のモンゴルと同じくらい広い面積があるのね。
南側にはチベット人が暮らすチベット自治区があるよ。
パパクマ
↓自治政府があるウルムチです。
中国というより、中央アジアに近い雰囲気を持ちます。内陸にあるので、世界で最も海から遠い都市としてギネスブックに記録されました。
ウイグル人の顔立ちは?
ウイグル族はトルコ系の人々で、見た目はエキゾチック顔立ちで、でもそんなに濃くないアジア人という感じです。
中国の9割を構成する漢民族とは顔や言葉、文化や宗教(イスラム教)などが全く違います。
ウイグルの近代の歴史
<ウイグル族の国:東トルキスタン国旗↓>
ウイグルの歴史を見てみましょう。この地域は、古くからテュルク系の民族が多く住む土地なので、テュルク人(トルコ人)の土地という意味の、トルキスタンと呼ばれていました。
古くから中国とは政治経済の分野で交流があり、漢や唐に支配された時期、ウイグル帝国やモンゴル帝国に属していた時期があります。
その後18世紀には清の支配下に入り、清の滅亡後は中華民国(現在の台湾)に属しました。そして中華民国の新疆省であった1933年と1944年には、東トルキスタン共和国を建国しました。
それぞれ数年間は政権が存続しましたが、1949年、国共内戦に勝利した中国共産党が東トルキスタンに侵攻し、中華人民共和国へ統合されました。
ウイグルの弾圧問題とは?
それでは、ウイグル自治区の弾圧問題とはどんな内容でしょうか?
次の問題が発生しています。
- ウイグル自治区の豊富な資源が搾取されている
- ウイグル自治区が核実験場となっている
- 漢民族がどんどん流入してきている
- ウイグル語の使用制限がある
- 宗教(イスラム教)への制限がある
- ウイグル独自の文化が破壊されつつある
- 政治的な発言権がない又は少ない
- 当局による不当と思える逮捕・拘束がある
日本人は当たり前すぎてあまり意識しにくいですが、宗教や言語に対する制限は、自分の信じるものやアイデンティティに対する弾圧として特に辛いことです。
自分の信条やアイデンティティに関する大切な部分を国に制限されてしまうのは、今の時代にあり得ないことです。
しかしウイグルでは中国当局に規制されていて、背くと投獄されることが公開されました。
出典:ウイグル族に「情け無用」中国が内部資料で 米報道 日経新聞
フウクマ
自由に発言できないなんて辛いのね・・・
下記は、ウイグル人の収容施設が公開された動画です。
こういった不満から、中国の中央政府に不満を持つウイグル族と政府との対立の激化で、多数の死傷者が出る事件が起こり、暴力事件や治安の悪化が実際に起こっています。
2009年には死傷者が最低192名、負傷者が1,721名となる、ウイグル騒乱と呼ばれる事件も起きました。
(ウイグル人組織のウイグル世界会議の発表では、死者数3,000人と発表)
天安門広場での車自爆事件
2013年にはガソリンタンクを搭載した車が天安門に突っ込み、死者と負傷者を出す事件が起きました。その結果、中国当局はウイグル族を200人拘束するなどの措置を取りました。
対立がますます激しくなる可能性があります。
こういった事件が突発的に起こるものではなく、積もり積もった不満が爆発するように起こっているので、今後もすぐには解決しない根の深い問題となっています。
アルカイダによるテロ宣言
また、2009年にはイスラムテロ組織で有名なアルカイダの幹部が「中国に対する聖戦」を表明しました。
その中で、「東トルキスタンの、抑圧されて傷ついた兄弟たちを支援することは今日のムスリムの義務」と述べています。
アルカイダは最近あまり聞かなくなりましたが、このようなテロ組織も注目しているのですね。そしてこういったテロ組織の発言は現実的な大きな脅威として、中国当局も警戒しているようです。
そして実際にイスラム教の過激派組織が報復宣言を出す事態になっています。
~引用ここから~
「イスラム過激派、習近平氏を標的説 ウイグル弾圧に激怒 報復宣言」
習近平国家主席率いる中国に、イスラム過激派組織が狙いを定めた-という衝撃情報が入った。新疆ウイグル自治区でのイスラム教徒弾圧に反発して、報復を模索しているというのだ。(後略)
出典:zakzak by 夕刊フジ
~引用ここまで~
※実際にはzakzak以外では報道されていない内容なので真偽はわかりませんが、こういった報道が出てくることは、まるっきり的外れでもないように思えます。
弾圧されているウイグル族の人々とテロ組織が結びつき、民族独立への動きが活発化する可能性もあります。
このことは他のチベット問題や台湾の独立問題、収まる気配のない香港問題に飛び火する可能性があるため中国政府はかなり気を警戒しているでしょう。
チベット問題はこちらにまとめました。
チベット問題とは?中国で起きている民族問題2つのウイグル組織
現在、ウイグル人の2つの大きな組織があります。
世界ウイグル会議と東トルキスタン共和国亡命政府です。
世界ウイグル会議
<ラビア・カーディル議長>
United States Mission Geneva – Flickr: Rebiya Kadeer in Geneva
世界ウイグル会議はドイツのミュンヘンに本部があり、世界各国の20以上のウイグル人組織を統括しています。日本でもイベントが行われました。代表はラビア・カーディル議長です。
暴力は使わず平和的で民主的なウイグル人の地位確立を目指しています。
しかし最終目標として、分離独立を目指すのか高度な自治を目指すのかは、はっきりと表明していません。
民族問題で同じチベット亡命政府のような平和的な印象です。
東トルキスタン共和国亡命政府
2004年に発足した東トルキスタン共和国亡命政府の本部は、アメリカのワシントンに置かれています。
目標はウイグル自治区を、東トルキスタン共和国の領土とし、中国からの分離独立を目指しています。
東トルキスタン共和国亡命政府では大統領や首相も選出されているよ。
パパクマ
世界ウイグル会議については、独立を妨げる組織として非難しています。イスラム教の過激な部分が感じられる印象です。
さいごに
ウイグルの弾圧問題についてでした。
この問題が今後どのような方向に向かうのか、尖閣問題で対立する日本としてはとても気になります。
中国が強引に抑え続けていくのか、不満を持つウイグル人を諸外国が支援する※などして、独立する方向も可能性があるのか、今後も関心を持って調べていきたいと思います。
読んでいただき、ありがとうございました。
ウイグルとチベットのことが気になって、こちらに辿り着きました。
中国と両国(ここは”国”で)の関係を頭に入れようと思うのですが、いつも細かい成り立ちをわすれてしまう残念な頭なので、こんなふうにまとめてくださるととても助かります。ありがとうございます。
どんなに、こちらが平和を望んでいても、それを望まない、踏みにじろうとする、
輩(やから)と呼ぶにふさわしい国がいますね。
日本も、第二のウイグルやチベットにならないためにも
自分達の身は自分達で守らないといけないと思うし、
それに目覚めないといけないのにな…と、こちらの記事を読んでいてつくづく感じました。
風来坊さん、こんにちは。
国際情勢ってややこしいですよね。国や地域もたくさんありますし。
> どんなに、こちらが平和を望んでいても、それを望まない、踏みにじろうとする、輩(やから)と呼ぶにふさわしい国がいますね。
そうなんですよ。こればかりは本当に困ったものです。
日本に起こらなければ良し、万が一起こった時のことを想定して準備しておく、というのが大切ですね。
コメントありがとうございました!