こんにちは、日本と愉快な仲間たち(JAW)の管理人ヤナイです。
WTOグッジョブ!と思わず言ってしまう出来事がありました^^
中国が日本へのレアアース輸入を不当に禁輸した件で、WTOによる判決が出て日本勝訴(2014年)となったのです。
- 2010年:日本へのレアアース輸出を中国が不当に規制(尖閣諸島沖で起きた中国漁船衝突事件への報復措置)
- 2012年:日米欧が共同でWTOに提訴
- 2014年:日本勝訴
- 2015年:中国は日本へのレアアースの輸出規制を全廃
こういった国際間の紛争が解決するのは有り難いですよね。
貿易紛争に対してWTOありがとうございます!と思うのと同時に、GATTの時だったら難しかったんだろうな~とも思いました。
GATTはWTOができる前の貿易に関する一般協定だよ。
パパクマ
なぜならWTOとGATTでは大きな違いがあったからです。
今回はそんなwto(世界貿易機関)とは何かわかりやすく、またwtoとgatt(ガット)の違いについて見ていきましょう。
wtoとは?役割と基本原則をわかりやすく
WTOとはわかりやすくご紹介すると、「国と国との貿易がスムーズに行われるよう様々なルールを決め、紛争が起こったらそれを話し合って解決(時には裁判)するための唯一の国際組織」です。
世界中のほとんど国がWTOに加盟していて、日本語に訳すと「世界貿易機関」と言うよ。
パパクマ
フウクマ
外国との取引だから、共通したルールが必要なのね。
まず、WTOの役割を見てみましょう。
- 貿易の共通ルール作り
- ルールが守られているか監視
- 貿易紛争の解決(裁判)
国が違えば文化も違いますし、商取引なので儲けたり損をしたりすることもあります。そのため貿易に関する共通の国際ルールと、揉め事を解決する手段が必要です。
続いて、WTOには次の基本原則があります。
- 差別をしない
国は貿易相手国を差別してはいけない。最恵国待遇原則※、内国民待遇原則※の遵守。 - 自由貿易の推進
関税や数量制限などの貿易障壁を下げて貿易を促進する。自分勝手に関税を引き上げたりしない。 - 不当な競争の防止
政府は輸出補助金などを援助したりダンピング※など、不公正なことはしない。 - 発展途上国の保護
WTO加盟国は4分の3が発展途上国なのでWTOのルールを厳格に守ることが難しい場合、適応できるまでの時間的猶予を与え、ルールの緩和を容認する。 - 環境保護
加盟国は環境保護、公衆衛生、動植物の保護を行うための措置を講じる。
出典:WTO HPより
フウクマ
こういった基本原則を加盟国は守るように努力するから、世界はよくなっていくのね!
- ※最恵国待遇(さいけいこくたいぐう)原則とは?
ある国に与えた関税の引き下げなどを優遇するという約束は、公平に他国にも適用しなければならない。 - ※内国民待遇(ないこくみんたいぐう)原則とは?
同じ種類の品物において、輸入品と国産品で差別をしてはならない。例えば国産品は消費税ゼロで輸入品は消費税を課す、などをしてはならない。 - ※ダンピングとは?
利益を度外視して安売りすること。
2019年にはアメリカが中国に対して関税を引き上げたことが、「ルール違反」として指摘されたよ。
パパクマ
1つめの「差別をしない」なんて私達の生活からすると当たり前のようですが、貿易でも差別はありますし、相手国に要求を通すための武器にもなります。そういった不公正な取引を防止するため、WTOは存在しています。
ただし、「差別をしない」は発展途上国には不利になりますので、「発展途上国の保護」により、発展途上国を優遇する「特恵関税(とっけいかんぜい)制度」があります。
日本も特恵関税制度を実施しているよ。
パパクマ
中国も発展途上国の申請をしていて優遇されていますが、経済規模は日本3倍のGDPで世界2位であることから、違和感を覚えてしまいますよね(^_^;)
また、韓国(GDP12位、輸出6位)も長年発展途上国として申請してきたのですが、ようやく2019年に放棄することにしました。
自由貿易については下記にまとめました。
自由貿易と保護貿易の違いは?表で簡単にわかりやすく!次は、WTO以前の一般協定(実際は組織)であったGATTとの比較、違いという視点で見ていきましょう。
wtoとgatt(ガット)との違いは?
wtoとgatt(ガット)との違いはいくつかありますが、大きく分けると次のようになります。
- 組織の体制が違う
WTOは正式な国際機関でGATTは一般協定。 - 貿易対象が違う
WTOは金融やサービス知的財産権なども対象となり、GATTは物品のみ。 - 貿易紛争の解決方法が違う
WTO:ネガティブ・コンセンサス方式
GATT:コンセンサス方式
GATTが発展してWTOになりました。そのため元は同じですので、まずは成り立ちについて見てみましょう。
gattとwtoの成り立ち
1930年代に世界的な不況が起こりました。
その不況に対処するためイギリスなどの植民地を持つ国は関税の引き上げや輸入制限などを行い、ブロック経済と呼ばれる自国経済を優先させる政策を行いました。
同じ商品でも、他国からの輸入には関税や制限をかけて、自分の植民地からの輸入は優遇しました。
フウクマ
WTOの基本原則で出てきた「差別」をしているのね。
そういった植民地を持つ国々は、「ふう~やれやれ、これで経済はなんとか大丈夫だな。」と安心できたんですが、植民地を持たない国は大変で、不況を抜け出せず経済は混乱しました。
植民地を利用して潤う国と、締め出されて経済がどん底な国。当然どん底の国から不満が出て、諸外国の経済的な対立が激しくなっていきました。
この対立は第二次世界大戦の一因にもなってしまったよ。
パパクマ
戦後反省した諸外国は、貿易の自由化や差別をしないための国際貿易ルールを支える組織が必要だと考えました。
そこで国際貿易機関(ITO)という国際機関を設立するための暫定的な多国間での協定(約束事)として、GATTは1947年に締結され1948年に発効されました。
しかしITOは設立されませんでしたので、GATTはそのまま多国間の貿易協定として機能することになりました。
1995年まで事実上の国際機関として運営されたものの、正式な国際機関としての法的な根拠はありませんでした。
その後時代が進むにつれて貿易や国際情勢は複雑化し、GATTでは対応しきれなくなってきたためウルグアイラウンド交渉と呼ばれる協議の中で、WTO(世界貿易機関)の設立が決定され、GATTを発展解消させて1995年に成立しました。
フウクマ
GATTが進化してWTOになったのね。
wtoとgattとの違い1!組織の体制が違う
gattとwtoの歴史を見てみました。その理念や役目は同じでありながら一般協定であったGATTと、正式な国際機関であるWTOでは、組織の体制が大きく違うことがわかりました。
WTOとGATTの組織データを比較してみましょう。
GATT※1994年時点 | WTO※2020年時点 | |
---|---|---|
事務局 | スイスのジュネーヴ | スイスのジュネーヴ |
事務局長 | ピーター・サザーランド | 空席 ロベルト・アゼベド(ブラジル)が2020年5月に突然辞任 |
加盟国 ※GATTは最終締結国 | 128カ国・地域 | 164カ国・地域 |
予算 | 約207億円 | |
日本の分担率(金額) | 約4%(約8億円) |
スイスのジュネーヴのGATT事務局は、そのままWTO本部になったよ。
パパクマ
2020年11月現在はWTO事務局長は空席のため選任中です。候補はナイジェリアのヌゴジ・オコンジョ=イウェアラ女史(アメリカ国籍も持つのでアメリカ人でもある)、韓国のユ・ミョンヒ女史が候補として残っています。
WTOに比べてGATTは一般協定であったため、立場が弱いという弱点がありました。これが3つ目の紛争解決手段にも大きく影響します(後述)。
wtoとgattとの違い2!貿易対象が違う
2つ目の違いは取り扱う貿易対象です。
GATTは貿易対象が物品のみであったのに対し、WTOでは金融やサービス業、知的財産権など幅広い分野が対象となっています。
フウクマ
成り立ちと同様、時代に合わなくなってきたため大きく拡大されたのね。
次で、WTOの強力な紛争解決方式について見てみましょう。
wtoとgattとの違い3!貿易紛争の解決方法が違う
3つめの違いは貿易紛争の解決方法です。
どんな商取引もそうですが、貿易をしていると利益が反すること(貿易紛争)も起こります。
そんな時まずは当事国同士で話し合って解決するよう努力しますが、最後まで紛争を決着しようとすると国力の差がそのまま勝敗になってしまいます。その場合は国力の弱い方が、泣き寝入りすることになり公平さに欠くことがあります。
フウクマ
強い国が常に儲かる取引なんて、安心して取り組めないわ。
さらに国力が拮抗していたら紛争がエスカレートしてしまうこともあり得ます。
冒頭の日中レアアース紛争はGDP2位と3位の大国同士で、しかも歴史問題や領土問題も抱えているので、当事国同士の解決は難しかったでしょう。
そこで公平な第三者としての紛争を解決する手段が必要となるんだね。
パパクマ
しかしWTOとGATTではその解決方式に次のような大きな違いがありました。
- GATT(ガット):コンセンサス方式
全加盟国が賛成(異議を唱えない)の場合に実施できる採択方式。紛争の解決手段としては現実的ではない。 - WTO:ネガティブ・コンセンサス方式
全加盟国が反対しない限り実施できる採択方式。よほどのことがない限り採択される。
GATT下では違反を問われている国が自国に対する不利な採択に対して、当たり前ですが反対をするため一向に解決方法が決まりません。
フウクマ
どういうこと?
例えば日中レアアース紛争なら、中国に規制撤廃をさせたいんだけど、それを中国も賛成しないと実施できなかったんだ。
パパクマ
フウクマ
賛成するわけないわね・・・
そのため、GATT下では紛争が速やかに解決しにくいという問題がありました。
これがWTO下では決定が採択されやすくなり、ほぼ自動的に解決手続きが進行するようになりました。
これも例えば日中レアアース紛争だと、中国に規制撤廃をさせたい時、中国とその友好国が反対しても全加盟国が反対しているわけじゃないなら採択されるよ。
パパクマ
フウクマ
それならほとんど通るわね!
WTOの紛争解決方式は国際機関としてかなり強力で大きな特徴となっています。
ちなみにこの結果紛争の案件数が次のようになりました。
- gattの紛争案件数
1948~1994年の46年間で314件(年平均6.7件) - WTOの紛争案件数
1995~2018年の23年間で563件(年平均24.5件)
フウクマ
年平均で4倍も差があるのね!
これは紛争自体が増えたというより加盟国がWTOに対して紛争の申し立てをしても無駄じゃない、訴えるとちゃんと解決してもらえる!と考えるようになった結果といえますね。
実際に冒頭の日中レアアース紛争の件は良い例ですね(#^.^#)
しかし最近はアメリカのWTOへの反発により、紛争の解決に遅れが出ています。。
ただ、2020年のアメリカ大統領選でトランプさんは負けて、バイデンさんが誕生することが決まりました。トランプは強力にアメリカファーストでしたが、バイデンは国際協調をアピールしていますので、今後はWTOも平常運転に戻れるかもしれません。
さいごに
WTOの解説とGATTとの違いでした!
記事を書きながら思ったことがあります。
「そういえば自分が中学生の時にはWTOじゃなくてGATTだったな~」
今はきっと両方習って両者の違いとかがテストに出たりするのかもしれませんね!
世界は動いているんですね~
WTOは自由貿易を推進していますが、新型コロナウィルス以降の世界では反グローバル化が進むという予想もありますね。
保護貿易については次にまとめました。
中学生です! すごくわかりやすいです!
こんなの探してました♪
ありがとうございます。
今後も、活用させていただきます
ありがとうございます^^
ご活用くださいませ~!
宿題で、習っていないのにまとめて来いなんて言う無茶なものがあったのでたすかります。
高校生さん、こんにちは。
習ったところから出してほしいですが、「知らないことをどのように調べて、それをどうまとめるのかな?」という部分を見られるテストだと思って頑張ってください^^